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2009年11月27日 (金) | Edit |
1944年アメリカ映画モノクロ作品。
漂流する救命艇で敵国のドイツ兵を助けた事で起こる乗客達の混乱を描いた人間ドラマ。

第2次世界大戦時の大西洋。アメリカ行きの客船が、ドイツのUボートに撃沈されてしまいます。大破した船内から、運よく救命ボートに乗り込むことが出来たのは、8人だけでした。
女性ジャーナリストや看護婦や富豪や船の乗組員など、それぞれ人種や職業や性別が違う8人を乗せ、海を漂う救命ボート。そこに新たに、漂流してきた男は、なんと、敵国ドイツの兵士でした。
乗せるべきか、乗せないで放り出すべきか、乗客たちの意見は割れますが、話し合いの結果、その男を人道的見地から助ける事にするのですが……

参考動画リンク

製作、ケネス・マクゴーワン
監督、アルフレッド・ヒッチコック
原案、ジョン・スタインベック
脚本、ジョー・スワーリング
撮影、グレン・マックウィリアムズ
音楽、エミル・ニューマン
出演、タルラー・バンクヘッド、ウィリアム・ベンディックス、ウォルター・スレザック、メアリー・アンダーソン、ジョン・ボディアック、ヘンリー・ハル、ヒューム・クローニン

この作品と同時期のヒッチコック監督の代表的な作品に、「疑惑の影」「白い恐怖」「汚名」などがあります。
ジョン・スタインベックは、ノーベル文学賞を受賞したアメリカの小説家で、代表作に、『二十日鼠と人間』『怒りの葡萄』『エデンの東』などがあります。この作品の原案を、一人称の小説形式で書きましたが、映画化にあたっては大幅に改編されています。
ヒューム・クローニンは、ヒッチコック監督と友人関係で、「ロープ」の脚色なども手がけています。

戦時中に作られた事もあって、なかなか検閲が厳しかったようですが、製作者側の理解と信頼もあり(ダリル・F・ザナックが従軍して不在だったので)、比較的自由に撮影できたようです。もちろん、検閲側の意向も反映してます。なぜならば、そうしないと公開できないからです。しかし、そこのところは、うまく当局と取引や駆け引きをし、作品のクオリティを落とさずに、作品を仕上げたようです。
ヒッチコック監督実験的野心的な映画作りをしていたころの一本で、1948年の実験作「ロープ」につながっていく前段階的作品です。救命ボート上でストーリーの全てが展開され、劇中音楽が使われていないなど、限定された場所で、しかも音楽なしという、映画的にとても難しい事に挑戦しています。映像テクニックと編集を最重要視した、ヒッチコックらしい映画ともいえるかもしれません。
近年、ますます評価の高まっている作品で、もちろん傑作であることは間違いありません。
ちなみに、ヒッチコックのカメオ出演シーンは、新聞の裏面広告の痩せ薬の、使用前使用後の写真です。もちろん、ヒッチコック監督のジョークなので、実在の薬ではありませんが、それを本気にした観客の、痩せ薬への問い合わせが殺到したという逸話があります。


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テーマ:DVDで見た映画
ジャンル:映画
2009年11月22日 (日) | Edit |
1996年アメリカ映画。
さえない中年男が計画した偽装誘拐が思わぬ方向に転がり大事件を引き起こす傑作犯罪スリラー

ノース・ダコタ州ファーゴ。雪深い田舎町のバーで、怪しい2人組自分の女房の誘拐を依頼したジェリー。ジェリーは、大金持ちの義父が経営する車のディーラーで働かして貰っている冴えない中年男です。なぜ自分の女房の誘拐を依頼したかというと、駐車場経営の為の資金が欲しかったからです。義父に出資を頼んでいましたが、断られていたのです。そこで、大金持ちの義父に8万ドルの身代金を出してもらい、怪しい2人組みと折半し、女房を無事に帰してもらって、自分の取り分の4万ドルで駐車場の土地の前金にするつもりでした。
怪しい2人組、大男でマルボロマンに似た無口なゲア小男で皮かむり(アソコ)のカールは、早速、ジェリーの女房を誘拐ミネソタ州のアジトへと車を走らせていましたが、途中、パトカーに車を止められてしまいます。小男のカールは、穏便に済ませようとしますが、大男のゲアは、何を思ったのか、突然警官の頭を掴み発砲撃ち殺してしまいます。ゲアは、警官の死体を片付けていたところを目撃した、車に乗ったカップルも続けざまに射殺します
翌日、3人の射殺事件が起こったと連絡を受けた、ミネソタ州のブレイナードの女警察署長マージは、身重の体(8ヶ月)を引きずりながら、独特でマイペースな捜査を開始します。
一方、そんなことが起こっているとは全く知らないジェリーは、駐車場の出資話を義父に承諾してもらえそうになり、慌てて計画の中止を要請しますが、事態はもう後戻りできない状態になっており……

予告編動画リンク

製作総指揮、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー
製作、脚本、イーサン・コーエン
監督、脚本、ジョエル・コーエン
撮影、ロジャー・A・ディーキンズ
音楽、カーター・バーウェル
出演、フランシス・マクドーマンドスティーヴ・ブシェーミウィリアム・H・メイシーピーター・ストーメア、ハーヴ・プレスネル、ジョン・キャロル・リンチ

ジョエル・コーエン(兄)イーサン・コーエン(弟)は、常にコンビで映画を作り、「ミラーズ・クロッシング」「バートン・フィンク」「ノー・カントリー」などの代表作があります。古き良きアメリカ映画のエッセンスを、現代風にアレンジした作風で知られている、新世代の名匠です。
撮影のロジャー・A・ディーキンスは、コーエン兄弟のほとんどの作品で、撮影を担当しています。
音楽のカーター・バーウェルも、コーエン兄弟の作品のほとんど全てを担当しています。
フランシス・マクドーマンドは、この作品でアカデミー主演女優賞を獲得しました。私生活では、ジョエル・コーエンの奥さんでもあります。
スティーブ・ブシェーミウィリアム・H・メイシーピーター・ストーメアジョン・キャロル・リンチと、個性派で演技のうまい名脇役を揃えており、通好みのキャスティングとなっています。

フランシス・マクドーマンドの演技が素晴らしく、身重で人の良い善良な女警察署長を、ミネソタ訛りを含めて、チャーミングに演じています。
ポール・バニヤンの巨人像登場人物がTVを観ている場面(やたらと多い)が、この作品の虚構性を象徴しており、ストーリーも、最初の嘘がもとで、とんとん拍子に取り返しのつかない酷い事態にまで発展してしまう(嘘くさいほどに)というもので、コーエン兄弟は、運命に翻弄される登場人物を利用し、ユーモアと残酷さが同居した現代の寓話を作り出しています。
個人的に面白かったのが、ちゃっかりと自分の都合(駐車場経営のための資金)に合わせて、身代金の額を8万ドルから100万ドルに増額していた、メイシー演じるダメ男ジェリーの、コッソリとした、したたかさです。あとは、ポール・バニヤンよろしく斧を片手に相棒に襲い掛かるストーメア演じる大男ゲアの姿にも笑ってしまいました。


テーマ:DVDで見た映画
ジャンル:映画
2009年11月16日 (月) | Edit |
1960年アメリカ映画モノクロ作品。
人類全滅の危機を生き残った3人の男女が繰り広げるSF風(?)愛憎劇。

休暇でプエルトリコのリゾート地にやってきた大金持ちのハロルド(ギャンブル好きの自信家)妻のエヴリン(セクシー)。ハロルドは休暇だというのに、ギャンブルや仕事をするばかりで、妻のエヴリンは少々退屈気味。ハロルドはアメリカで訴訟を抱えており、休暇には顧問弁護士のマーティン(真面目な青年)も同行しています。
ハロルドは不満げなエヴリンをなだめる為、弁護士のマーティンも連れ、クルーザーで沖合いに出て、3人でスキューバーダイビングを楽しみます。そして、3人が海中からあがった時、何か地上に異変が起こっている事に気がつきます。明らかに空気が薄いのですマッチの火が点かないほどに
そこで酸素ボンベを吸いながら、リゾート地に戻った3人ですが、そこは地獄絵図でした。全員が酸欠で死に絶えていたのです。地上に何が起こったかは分かりませんが、一時的に地球上から酸素が無くなったようでした。酸素は元通りになったようですが、この世に3人しかいないという事実は変わりようがなく、唯一生き残った3人は、女1人男2人という(昔のドリカム的な)微妙な構成だった為、時間が経つほどに、なにやら男達の関係がギクシャクし始め……

予告編動画リンク

製作、監督、ロジャー・コーマン
脚本、ロバート・タウン
撮影、ジャック・マークエット
音楽、ロナルド・S・ステイン
出演、ベティー・ジョーン=モーランド、アンソニー・カーボン、ロバート・タウン

低予算早撮りの偉大なるB級映画監督ロジャー・コーマンは、この映画が撮られた同じ年に、「アッシャー家の惨劇」「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」という後世に残る2つの傑作を世に放っています。
ロバート・タウンは、「さらば冬のかもめ」「チャイナタウン」といった、アメリカンニューシネマ期の傑作の脚本を手がけています。

このDVDはモノクロですが、アメリカにはカラーのバージョンがあります。本来はカラーのようですが、なぜかWHD版はモノクロです。
プエルトリコ低予算早撮り(いつものように)で作られた映画で、「呪われた海の怪物」(過去に記事にしましたが)という激安ムッ●(ポンキッ●)モンスターがでてくる悪名高い映画もついでに作られています。
「地球最後の女」という題名が、1964年に作られた「地球最後の男」に影響を与えているかは謎ですが、非常に似ていることは確かです。ストーリーはそれほど似ていませんが、人けのない死体だけがある通りの描写ラストの教会などは影響を与えているような気がします。リチャード・マシスンの小説にインスパイアされて作られたのが「地球最後の女」で、リチャード・マシスンの小説を最初に映画化したのが、「地球最後の男」という位置づけでいいのではないかと思います。おそらくロジャー・コーマンは原作料などを払いたくなかったので、オリジナルストーリーにしたのでしょう(勝手な妄想です)
映画の中身はというと、専ら生き残った3人の微妙な心の動きを描くことに終始し、SF的な展開もホラー的な展開もほとんどありません。ほとんど会話でストーリーが進んでいき、ややこしい恋愛(不倫)映画になっているのが、とても珍しいです。
この作品は、それなりの人間ドラマに仕上がっており、出来はそんなに悪くないと思います(この手のB級作では)


テーマ:DVDで見た映画
ジャンル:映画
2009年11月11日 (水) | Edit |
1961年イギリス映画モノクロ作品。
ヘンリー・ジェイムズの小説『ねじの回転』を映画化した心霊ホラーの傑作。

19世紀イギリス。
とある富豪から、郊外にある屋敷の責任者兼姪と甥の家庭教師として雇われたギデンス。ギデンスは牧師の娘で、裕福ではないものの家族に囲まれ幸せに育った常識的な女性です。富豪は、身寄りのない甥と姪を引き取ってはいますが、本人はロンドンに住み、旅行や趣味に忙しく、子供達のことで自分が煩わせられるのを極度に嫌っています。なので、問題が生じても自分には知らせず、独自に解決して欲しいというのが、雇用の条件でした
いざギデンスが赴任してみると、そこは美しい田園や自然に囲まれた優美な場所でした。そして、そこに作られた、広大な庭園と瀟洒な大邸宅は、ギデンスにとって理想ともいっていいものでした
その邸宅に住むのは、富豪の姪の少女フローラとハウスキーパーのグロース婆さん。あとは、メイド2人と料理人と庭師の夫婦だけです。
優しくて綺麗なギデンスは、フローラにすぐに慕われるようになり、順調に職務をこなしていましたが、ある日、寄宿学校に預けられていた富豪の甥の少年マイルスが、学校を退学になって帰ってくることになります。
最初は、マイルスが退学になるほどの悪い子供かと心配していたギデンスですが、全然、そんな事はなく、とても素直でいい子なので、学校側の何かの間違えだと思ったギデンスは、さらなる愛情を込めて2人の世話をします。
素直な2人の子に慕われ、充実した日々を送るギデンス。しかし、最初は気のせいかと思っていた、何者かの声人影が、次第に、はっきりとした存在として、ギデンスの心を支配していきます。ここには、何かがいる、それは、この世ならざるものなのか?ギデンスは、だんだん精神的に追い詰められていき……

参考動画リンク

製作、監督、ジャック・クレイトン
原作、ヘンリー・ジェイムズ
脚本、ウィリアム・アーチボルド、トルーマン・カポーティ
撮影、フレディ・フランシス
美術、ウィルフレッド・シングルトン
音楽、ジョルジュ・オーリック
出演、デボラ・カー、ピーター・ウィンガード、メグズ・ジェンキンズ、マイケル・レッドグレイヴ、パメラ・フランクリン、マーティン・スティーブンス

イギリスの映画監督ジャック・クレイトンの他の作品に、「年上の女」「何かが道をやって来る」などがあります。
トルーマン・カポーティは、アメリカの小説家で、代表作に『ティファニーで朝食を』『冷血』などがあります。
フレディ・フランシスは、ハマー・プロの映画など、多数のB級ホラーやSFの監督をつとめていますが、撮影監督としては、たいへん有能な人物で、アカデミー撮影賞を2度受賞しています。
ジョルジュ・オーリックは、フランスの作曲家で、「美女と野獣」「ローマの休日」などの音楽を担当しています。
デボラ・カーは、アカデミー主演女優賞に6度ノミネートされた名女優です。無冠でしたが、のちにアカデミー名誉賞を受賞しています。
この映画で、子役のフローラを演じているパメラ・フランクリンは、後に大人になり、「ヘルハウス」での、エロティックで可憐な霊媒師役で、多くのホラーファン(男性)を虜にしました

映画中、随所に見られる性的ほのめかしと、家庭教師を演じるデボラ・カー神経症ともとれる演技が、単なる幽霊話に留まらず、サイコホラー的雰囲気をも醸し出しています。一歩間違えると、単なる欲求不満のメンヘル女の妄想になってしまうところを、見事な陰影の格調高い映像美“亡霊がそこにいる!”という、そっけない恐さの演出で、現実とも幻覚ともつかない、怪奇なムード溢れる、芸術的なゴシックホラーに仕上げています。
中でも、湖にたたずむ黒い服を着た女の亡霊のシーンは、出色の出来で、本来、人が居るはずのない場所に、人間のようなものが、ただ、たたずんで、何をするでもなく、そこにいる、それだけなのに背筋が凍るほどに恐いという、まさに心霊ホラー的恐さの真髄を見せてくれます。
後世のホラーに、多大なる影響を与えた作品です。是非観ましょう。


テーマ:DVDで見た映画
ジャンル:映画
2009年11月03日 (火) | Edit |
2003年製作アメリカ作品。
少女の霊を見た精神科医が悪夢と現実の境目を彷徨うサイコ・ホラー。

女性刑務所の精神病棟に勤務する女精神科医ミランダ。仕事も順調で、上司で夫のダグとも、うまくいっています。
豪雨の降りしきる、ある日、いつものように職場から、車で家に帰るミランダでしたが、途中、雨による道路の陥没で、迂回を余儀なくされます。視界の悪い中、迂回路の白い橋を渡りきった、ちょうどその時、車の目の前に不気味な少女が出現。衝突しそうになったミランダは車を止め、傷だらけのその少女を抱きしめ・・
3日後・・ミランダが目を覚ました時、そこは女性刑務所の精神病棟内の独房でした。ミランダは、夫のダグ殺しの容疑者として収容されていました
しかし、ミランダには、ダグを殺したのかも、自分の身に何が起こったのかも、何もかも全く分かりません。少女を抱きしめて以降の記憶が全くないのです
そして、混乱するミランダに追い討ちをかけるように、身の回りで、現実とも幻覚ともつかぬ出来事が起こるようになります……

予告編動画リンク

製作、ジョエル・シルバーロバート・ゼメキス、スーザン・レビン
監督、マチュー・カソヴィッツ
脚本、セバスチャン・グティエレス
撮影、マシュー・リバティーク
音楽、ジョン・オットマン
出演、ハル・ベリーロバート・ダウニー・Jr、チャールズ・S・ダットン、ジョン・キャロル・リンチ、バーナード・ヒル、ペネロペ・クルス

マチュー・カソヴィッツは、フランスの映画監督で、俳優もこなす多才な人物です。監督作では、「憎しみ」「クリムゾン・リバー」などがあります。
ハル・ベリーは、2001年に「チョコレート」で白人以外で初のアカデミー主演女優賞を受賞しました。
ロバート・ダウニー・Jrは、薬物で逮捕されるなど、お騒がせな俳優として知られていますが、アメリカでは根強い人気があり、広く愛されています。
ペネロペ・クルスは、スペイン出身の美人女優で、ウディ・アレン監督の「それでも恋するバルセロナ」で、アカデミー助演女優賞を受賞しています。かわいくて綺麗なので、個人的に好きな女優です。

監督としても有名な、ジョエル・シルバーロバート・ゼメキスが設立した、ダーク・キャッスル・エンターテイメント製作の映画です。
自分の身に起きていることは、悪夢なのか?狂気なのか?“Not Alone”という謎のメッセージの意味は?など、ミステリー仕立てのサイコ・スリラーで、ラスト近くまで結末の予想がつきません。カメラワークも凝っていますし、CGも控えめで目立たないところも好感が持てます。
ただ、ゴシカという題名がついていますが、ゴシック的なムードがあまり感じられないのは、残念です。
あと、ハル・ベリー強すぎるのも、ホラー的なムードを考えると疑問なところではあります。ハル・ベリーって、やっぱりホラー向きの役者じゃないんですよね。幽霊の方が逃げ出しそうな感じですし・・
まぁでも退屈することなく面白く観る事が出来たので、娯楽作としては合格点をあげれると思います。


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